言葉でできた夢をみた。

海の底からわたしをみつめる眼は、きっといつか沈めてしまったわたし自身の眼なのだろう。(書きながら、勉強中。)

2021-01-01から1年間の記事一覧

お節介な愛情のある風景―加藤多一『馬を洗って…』

今回はこの絵本について書きたい。 加藤多一・文、池田良二・版画『馬を洗って…』(童心社、1995年) 馬を洗って… (若い人の絵本) 作者:加藤 多一 童心社 Amazon 清冽な文と重厚な版画で描く〈若い人の絵本〉 遠いあの日、迫りくる戦争の影 馬を洗うたった一…

書けない日々の声たち―ルイーズ・グリュック『野生のアイリス』

これまでブログに詩集の感想を書いたことがなかったから、今回ははじめての試み。そもそも普段あまり詩を読まないし、読めないし、詩集の感想を書こうとしているくせに「詩のことば」をちゃんと理解しているのかと問われたらちょっときびしい。それでも書い…

消えた海の底―ガルシア=マルケス『族長の秋』

今回は、ガルシア=マルケス『族長の秋』の感想を書く。 ガルシア=マルケス著、鼓直 訳『族長の秋』(綜合社編ラテンアメリカ文学13、集英社、1983年) 族長の秋 (ラテンアメリカの文学 13) 作者:ガルシア=マルケス 発売日: 1983/06/08 メディア: 単行本 主…

命の続く限り―ガルシア=マルケス『コレラの時代の愛』

40歳になったら死のうと思っていた。だがそれが数年先に迫って来たとたんに、老いというものを肯定したくなってきた都合のいい人間が私である。まったくもって自分勝手に生きてきたわけだが、そろそろまともな人間になろうと思った矢先に発生したのがコロナ…

時に挽かれるもの―オルガ・トカルチュク『プラヴィエクとそのほかの時代』

今回は自分にとって三冊目のポーランドの小説、オルガ・トカルチュク『プラヴィエクとそのほかの時代』の感想を書いていこうと思う。 オルガ・トカルチュク著、小椋彩 訳『プラヴィエクとそのほかの時代』(松籟社、2019年) プラヴィエクとそのほかの時…

よみあとの余韻―黒田夏子『組曲 わすれこうじ』

ちかくのもの,手にとれるものでも遠まわりにかけばついやした言葉のぶんだけはるけくなるようで,そのものとの間にある時間もふかくなっていくような錯覚の連続に,ほとんど恍惚としながらよんだ. 黒田夏子『組曲 わすれこうじ』(新潮社,2020年) 組曲 …

でもまずはきのこを見つけなくては。―ロン・リット・ウーン『きのこのなぐさめ』

先日、あまりに悩み過ぎて頭から虹色のきのこが生えたので、そのきのこが何者なのか気になり図書館できのこ図鑑を調べていた。自分の手が図鑑を引き抜いたために大きな隙間のできた書架をふと見ると、そこに倒れそうになっている本があったので思わず手を伸…