言葉でできた夢をみた。

海の底からわたしをみつめる眼は、きっといつか沈めてしまったわたし自身の眼なのだろう。(書きながら、勉強中。)

2016-03-01から1ヶ月間の記事一覧

食い合う果ての消滅―本谷有希子「異類婚姻譚」

「暮らし」というものには痕跡がある。その痕跡だけが示されると、暮らしの主体たる個人の不在が際立つものだ。たとえばこの小説に出てくるものなら、これから山へ捨てられる猫サンショの生活用品、部屋に残される強烈な尿の臭い、家にいないはずの時間に玄…

『ボルヘスとわたし』と私―ボルヘスについてまとめ

これまで何度かに分けてボルヘスの『伝奇集』や『創造者』について書いてきたが、時々引用につかっていた『ボルヘスとわたし』という書物について、一記事書くことは無意味なことではないと思う。私が用いていたのは、J.Lボルヘス著、牛島信明訳『ボルヘスと…

シンメトリーと軽度のアナクロニズム―ボルヘス『伝奇集』

今回の更新でひとまず、ボルヘスの『伝奇集』については終わりにしたいと思う。いやいや、随分長々と語ってしまった笑。でもなんだかんだ言って、やっぱりボルヘスは『創造者』が一番良いように思ってしまいます(汗)勿論、『伝奇集』も楽しめましたが。 今…

まるでこの世界は迷路じゃないか―ボルヘス『伝奇集』

今回はボルヘス『伝奇集』より「バベルの図書館」と「八岐の園」という短篇小説について書いていきます。 ■「バベルの図書館」 (他の者たちは図書館と呼んでいるが)宇宙は、真ん中に大きな換気孔があり、きわめて低い手すりで囲まれた、不定数の、おそらく…

想像すること、夢をみること―ボルヘス『伝奇集』

前回に引き続き、今回もボルヘスの『伝奇集』から「アル・ムターシムを求めて」と「円環の廃墟」という二つ短篇小説を紹介する。 伝奇集 (岩波文庫) 作者: J.L.ボルヘス,鼓直 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 1993/11/16 メディア: 文庫 購入: 32人 クリ…

「世界はトレーンとなるだろう。」―ボルヘス『伝奇集』

J.L.ボルヘス『伝奇集』を読んだ。今回からしばらくこの本の中から私が好きな短編作品を取り上げていきたいと思う(一体何作分書くのやら)。 伝奇集 (岩波文庫) 作者: J.L.ボルヘス,鼓直 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 1993/11/16 メディア: 文庫 購入…

読書の車窓から―磯崎憲一郎『電車道』

「これではまるで自分の過去に、ずっと密かに後をつけられていたようなものだな」 (磯﨑憲一郎『電車道』132頁より引用) 電車道 作者: 磯崎憲一郎 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2015/02/27 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (9件) を見る 今回は…

表現への驚きと謙虚さボルヘス―『創造者』

ホルヘ・ルイス・ボルヘス(1899ー1986)は、アルゼンチン出身の作家、小説家、詩人であり、「夢や迷宮」「無限の循環」「架空の書物や作家」「宗教・神」などをモチーフとする幻想的な短編作品によって知られている。 ……とかいうのはウィキペディアからざっ…