言葉でできた夢をみた。

海の底からわたしをみつめる眼は、きっといつか沈めてしまったわたし自身の眼なのだろう。(書きながら、勉強中。)

2016-08-01から1ヶ月間の記事一覧

束の間の越境―ル・クレジオ『海を見たことがなかった少年』

今回は前回に引き続きル・クレジオ『海を見たことがなかった少年』より「童児神の山」と「水ぐるま」という短篇作品を2本紹介したいと思う。 ル・クレジオ 著 豊崎光一、佐藤領時 訳、『海を見たことがなかった少年』(集英社文庫、1995) 海を見たことがな…

夢想としてまるで絵のような風景をみる―ル・クレジオ『海を見たことがなかった少年』

いつの頃からか、毎年に夏になると必ず読み返す本がある。 ル・クレジオ(豊崎光一、佐藤領時 訳)『海を見たことがなかった少年 モンドほか子供たちの物語』(集英社文庫、1995年)という本だ。 海を見たことがなかった少年―モンドほか子供たちの物語 (集英…

素材と表現の立場、自覚的に鑑賞すること―伊福部昭『音楽入門』について

伊福部昭、という人の名前を聞いてもそれが何者なのかいまいちピンとこない、という人であっても映画「ゴジラ」の音楽を作曲した人だよ、と言ってあげるとわかってくれたりする。それが良いことなのか、悪いことなのかはわからないが、ひとまず私はよく伊福…

言葉を使ってるから―仙田学「愛と愛と愛」感想その2

「言葉」というものは、人と人の間において障害にもなるし、架け橋にもなり得る。 人と人の間にあるかもしれない「空虚」を埋めることさえできるかもしれないし、人が隠そうと決めた心の弱い部分を暴力的にえぐり出し、攪乱してしまうかもしれない。 mihirom…

すっきりした文で、コミカルで、怖い―村田沙耶香「コンビニ人間」

今回は、村田沙耶香「コンビニ人間」について。この作品は第155回芥川賞受賞作ということで色々な人が手に取り、Twitterなどで感想を述べている。色々な人がひとつの作品について様々な感想を語る、今のこの状況、私はとても楽しい。 コンビニ人間 作者: 村…

騎士も城も恋人も、信じることが大事なのだ―セルバンテス『ドン・キホーテ』

今回の更新で『ドン・キホーテ』前篇に関する一連の更新は終わりにしようと思う。第一回目の更新で触れていた通り、今回は【絶対に本物の騎士になれないドン・キホーテ】、【重要な舞台装置、「魔法にかかっている宿屋」について】の二本立てで書いていく。…

物語の「中断」への積極的意味づけ―セルバンテス『ドン・キホーテ』

前回に引き続き、今回もセルバンテスの『ドン・キホーテ』前篇(牛島信明 訳、岩波文庫、2001)について書いていこう。 前回はなんとなく全体像的な話を書いたので、今回は【語りの面白さ】にフォーカスしてみたい。前回記事はこちら↓↓ mihiromer.hatenablog…

読書とは生活の中断である―セルバンテス『ドン・キホーテ』

おひまな読者よ。 さてさてお待たせしました!(え、なになに? 待ってないって言った? そんなの聞えなぁい!)今回の記事からしばらくの間、セルバンテスの『ドン・キホーテ』について書いていこうと思う。今回私が読んだものは岩波文庫版のこちら↓↓ セル…