言葉でできた夢をみた。

海の底からわたしをみつめる眼は、きっといつか沈めてしまったわたし自身の眼なのだろう。(書きながら、勉強中。)

2016-06-01から1ヶ月間の記事一覧

時間の絶滅―ル・クレジオ『調書』

僕の舌には、嘔吐の味のようなものがあった。暑くて、あらゆるものがじっとりと汗をかいていた。自分でも覚えているが、僕は学生ノートを一ページ破り、その真ん中に書いた。 蟻どもにおける ある破局の調書 (ル・クレジオ 著、豊崎光一 訳『調書』(新潮社…

低空飛行なカフカ―『絶望名人カフカの人生論』を読んで

フランツ・カフカ、頭木弘樹『絶望名人カフカの人生論』(飛鳥新社、2011年) 絶望名人カフカの人生論 作者: フランツ・カフカ,頭木弘樹 出版社/メーカー: 飛鳥新社 発売日: 2011/10/22 メディア: 単行本 購入: 3人 クリック: 48回 この商品を含むブログ (26…

読書の果ての「私」の分離、遊離―村上春樹『ねむり』

さて予告通り前回の続き。 実際、この本はひとつの物体として美しいのでおすすめである。 ねむり 作者: 村上春樹,カット・メンシック 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2010/11/30 メディア: ハードカバー 購入: 2人 クリック: 24回 この商品を含むブログ (3…

それは夢のようでない夢―村上春樹『ねむり』

今回から2回に分けてこの本について。 村上春樹、カット・メンシック(イラストレーション)『ねむり』(新潮社 2010年) ねむり 作者: 村上春樹,カット・メンシック 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2010/11/30 メディア: ハードカバー 購入: 2人 クリック…

「物語」は面白い―バルガス=リョサ『密林の語り部』

今も昔も、人間は絶えずフィクションを生み出し続け、語り続けている。物語る、ということに終わりはなさそうだ。今回ここで紹介する小説、バルガス=リョサ『密林の語り部』はズバリ、「物語」というものについて掘り下げた作品だ。 バルガス=リョサ(西村…

人と蚕が紡いだ歴史、産業、文化―畑中章宏『蚕―絹糸を吐く虫と日本人』

今回ご紹介する本はこちら↓↓ 畑中章宏『蚕―絹糸を吐く虫と日本人』(晶文社、2015年) 蚕: 絹糸を吐く虫と日本人 作者: 畑中章宏 出版社/メーカー: 晶文社 発売日: 2015/12/11 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (3件) を見る アカデミックなところでは…

ナボコフが語る『アンナ・カレーニナ』―悪夢という主題のこと、時間操作のこと。

今回の更新でトルストイ『アンナ・カレーニナ』に関する一連の記事は終わりにしたい。大長編を読むと、ブログの記事も長くなってしまう……。いいのか、悪いのか。 予告通り、今回は『アンナ・カレーニナ』自体というよりは、ナボコフが語った『アンナ・カレー…