言葉でできた夢をみた。

海の底からわたしをみつめる眼は、きっといつか沈めてしまったわたし自身の眼なのだろう。(書きながら、勉強中。)

丸っこい滑稽さ―ムーミン・コミックスを読んだはなし

ある時はカバに間違われて動物園の檻に収容されそうになったり(ムーミン・コミックス第3巻「ジャングルになったムーミン谷」)、

また別の時には動物愛護の名目で「かわいそうな」サーカスの動物たちを脱走させ、ムーミン屋敷で世話をするはめになったり、

さらに別の時、思い切りよく「冬眠」の伝統を打ち破ってみったり。

コミック版ムーミンでは、小説版のムーミンにはない「丸っこい滑稽さ」を存分に楽しむことができる。

 

以前このブログにムーミンの原作小説を読んだ感想を書いたが、今回はコミックスについてメモ程度に書いておきたいと思う。ムーミンは小説、コミック、絵本、アニメ、そしてたくさんのグッズが販売されていて色々な楽しみ方ができて良いなと思う。

 

 

私がたまたま手にしたムーミン・コミックスは以下の6冊だ。著者はトーベ・ヤンソンと弟のラルス・ヤンソン、訳者は冨原眞弓さんで、筑摩書房から2000年~2001年に出たものである。

 

ムーミン・コミックス第1巻 黄金のしっぽ』……「黄金のしっぽ」「ムーミンパパの灯台守」収録。

ムーミン・コミックス第2巻 あこがれの遠い土地』……「ムーミン谷のきままな暮らし」「タイムマシンでワイルドウエスト」「あこがれの遠い土地」「ムーミンママの小さなひみつ」収録。

ムーミン・コミックス第3巻 ムーミン、海へいく』……「ムーミン、海へいく」「ジャングルになったムーミン谷」「スニフ、心をいれかえる」収録。

ムーミン・コミックス第7巻 まいごの火星人』……「まいごの火星人」「ムーミンママのノスタルジー」「わがままな人魚」収録。

ムーミン・コミックス第8巻 ムーミンパパとひみつ団』……「やっかいな冬」「ムーミンパパとひみつ団」「ムーミン谷の小さな公園」収録。

ムーミン・コミックス第9巻 彗星がふってくる日』……「彗星がふってくる日」「サーカスがやってきた」「大おばさんの遺言」収録。

 

黄金のしっぽ ― ムーミン・コミックス1巻

黄金のしっぽ ― ムーミン・コミックス1巻

 

 

ムーミン・コミックス(全14巻セット)

ムーミン・コミックス(全14巻セット)

 

 

こう列挙してみてパッと、「あ、これ小説版で知っているエピソードだ!」と思えるものもいくつかある。灯台守や彗星という言葉にピンとくる人も多いはずだ。だけれど、単に小説の内容を同じように漫画にしたわけではなく、漫画表現の良さや面白さを際立たせるようなアレンジが加えられている。小説版には登場しないキャラクター(スティンキーやウィムジー、火星人などなど)も多数登場している。

漫画であることの面白さを存分に発揮していると思うのは、物語の始まりの1コマ目は私が見た限りではすべて「ムーミントロールの丸っこいお尻(しっぽ付き)」から描き出されている。すごくかわいい。読者に向かって「どうしよう」というようなことを語りかけてくるコマもあった。コマ割りの線が場面にあった植物になっているなど、コミックスでないとできない表現も楽しい見どころ。ひとつひとつ見ていくと本当に面白いのだ。

多くのムーミングッズのデザインがコミックスの1コマであったりするから、見たことのあるカットを見つけると嬉しくなる。ちなみに私が気に入っているムーミン関連グッズに、『ムーミン100冊読書ノート』(講談社、2016年)というのがあるのだけれど、この表紙絵は「ムーミン谷のきままな暮らし」(コミックス第2巻)の1コマだった。

 

ムーミン100冊読書ノート (講談社文庫)
 

 

 

スナフキン「なんだ そのしゃべりかたは?」

ムーミン「あのね この本によるとこれが……」

 (「ムーミン谷のきままな暮らし」コミックス第2巻より引用)

 

という台詞がついている。ムーミントロールが手にしている本のタイトルは『磁石のようにひきつける個性を得る方法』(?)らしい。ハウツー本的なものを片手に「男同士の気のおけない接しかた」だかを修得しようとしているムーミン。実はこの回、ムーミンたちみんながちょっとおかしいことになっている。ありのままの生活、よりも無理やりでっちあげた「義務」というものを果たそうと躍起になっているのだ。

 

はじめてコミックスを読んだ時にはその辛辣さに少し驚いた。小説版では作者トーベ・ヤンソンの語りが中和していたかもしれないキャラクターの辛辣さ。スニフの金の亡者ぶりはすごいし、権威や名声というものを風刺する作品群にはシニカルな笑いがある(私はそういうシニカルな笑いを理解するのにだいぶ時間がかかってしまうのだが)。

 

最後に印象に残ったフレーズをひとつ。

 

ムーミンママ「ねえ パパ 失われた青春は見つかったの?」

ムーミンパパ「ああ…じつをいうと一度も失ったことなどなかったかもな…」

ムーミン・コミックス8巻「ムーミンパパとひみつ団」より引用)

 

ひとまずここで暮らそうと思ったらまず家を建てるマイホームパパ的なムーミンパパ、しかし彼の中にはいつも新しい冒険を探す心があって、時々バクハツしてしまうのだ。その結果、ムーミン谷に様々なゴタゴタが発生するけれど、なんとなく丸くおさまる。おさまった時に振りかえってみると案外、年と共に失ったと思っていた好奇心や冒険心、青春時代に固有のわくわくした感じはあの頃と変わらず自分の中に残っていたのかもしれないと思える。このブログの管理人、年齢的に「ムーミンムーミン!」と騒ぐほど若くはない。だが、やはり、ムーミンは、かわいいのである。

ムーミンムーミン!!←笑

 

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