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Danse Macabre!

海の底からわたしをみつめる眼は、きっといつか沈めてしまったわたし自身の眼なのだろう。

本棚に入れたい本―『もうすぐ絶滅するという紙の書物について』

 

この本は、ウンベルト・エーコジャン=クロード・カリエールによる、書物やその歴史から文化というものについてまで幅広く、時にマニアックに語った対談です。

 

もうすぐ絶滅するという紙の書物について

もうすぐ絶滅するという紙の書物について

 

 

読みながら色々と文化的なことについて思いを馳せてしまう、そんな一冊でした。たぶん読んでいる時間より、考えている時間の方が長くなります。

はじめて知った言葉に「インキュナビュラ」「コデックス」「サミズダート」などがありました。「本」というものの歴史や文化的な位置づけの変遷なんかも、今後知っていけたら良いなと思います。

 

「この対談の最も愉快な部分はたぶん、愚かしさの礼賛に関するくだりでしょう。人類の膨大でたゆみない耕作に、黙って手を貸し、時に断固たる物言いをするが、決して悪びれない、愚かしさというもの。それを礼賛するところにこそ、書物を愛好し収集する者同士でもある、記号学ウンベルト・エーコと脚本家ジャン=クロード・カリエールの出会いがあるわけです。」

(ジャン=フィリップ・ド・トナックによる「序文」15頁より引用)

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書影と愛用万年筆(笑)、それから本の中身をちらっと。

 

 

 さて、今回の更新では主に「物体」という側面からこの本について書いていこうと思います! 本の感想とは思えない(笑)ことを書いてしまいますが、でも実際この本を手にしたら言いたくなることです。

やけに装幀にこだわりを感じる分厚い本でした。

400頁以上あるんです。ですがそれぞれの頁は余白が広くゆったりと文字が組まれている印象があります。普通の本みたいに、もうちょっと詰めたらこんなに頁数は必要になりません。

 

この本の中の「今日出版される本はいずれもポスト・インキュナビュラである」というところにウンベルト・エーコが書物というものの歴史について簡単に触れています。それによると、初期の書物は装幀なしで、綴じていないばらばらの紙の状態で売られていました。それを買った人が製本に出すのです。それ故に多彩な装幀の本が作られ、これが稀覯書収集の喜びのひとつなんだとか。ちなみに製本された状態で本が売られるようになったのは、17世紀から18世紀にかけてだそうです。

『もうすぐ絶滅するという紙の書物について』は現代我々が普通に手にできる同時代的な本です、そんなわけで当然、製本された状態で販売されているので同じ内容でも装幀が違う、みたいなことにはなりません。売られているものは何冊でもみんな同じになる。でもこの本は、限定された状況の中で、極限まで装幀にこだわり抜いた本だと思います。出版物にあふれている現代で敢えて物体としての「本」の存在感を前面に押し出した書物は珍しい。400頁もいらなかったかもしれないけれど、敢えて狙ったデザインしたとしか思えません。

 

この物理的存在感を良しとするか、悪しとするかは人それぞれ。

 

実はKindle電子書籍版もあるので、内容だけ読みたい人はそちらの方が便利かもしれません。紙書籍版は重いので寝転がって読むには不便でした(笑)

ただ、私はこの存在感たっぷりな本を自分の本棚に入れたいのです。明らかに場所をとるけれど、自分の蔵書(紙の本)で囲みたい。

 

「ある本とある本を隣り合わせに配置する動機は何でしょうか。どうしてほかの並べ方ではなくて、そういう並べ方にするんでしょう。書棚のなかの配列をがらりと変えるのはなぜでしょうか。たんにそれらの本を違う本の隣に置きたいからでしょうか。いつもと違う本を手に取るためでしょうか。違う本を近くに持ってくるためでしょうか。書物の場所を時々入れ替えることは必要だと私は思います。そういう習慣を持っていてほしいし、持つことを勧めます。」

(412頁より引用、カリエールの言葉)

 

並べてみるとわかるけれど、タイトルが大変オシャレな皮肉です。紙の本に囲まれて、幸せそうに「もうすぐ絶滅するという」なんて。

 

↓実はカバーの裏側までこだわりがあるっぽい(笑)

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次回から、もう少しこの本を読んで考えてみたことについて書いていきたいと思います。

・「生涯学習」のふたつの側面、あるいはこれはエグイことかもしれない。

・耐久メディアの脆弱性とゲーム機について

・本を読んでいるとどうしても逃れられないことに気がつくバイアス

という感じで書きたいと思います。

もう少しだけこの本の読書感想文に付き合っていただけたら嬉しいです。